ⓔノート18-7-5 代謝酵素NAT 2

 INHは代謝酵素N–acetyltransferase 2 (NAT 2) で肝代謝され排泄される.NAT 2には遺伝子多型があり,酵素活性の低い変異型アレルの数により,rapid acetylator (RA),intermediate acetilator (IA),slow acetylator (SA) の3群に分類される.SAの場合,INHは代謝されず肝毒性をもつヒドラジンになる.一方,RAでは,すぐに代謝され血中濃度が十分に上がらず効果が不十分になる可能性がある.NAT 2 genotypeの頻度には人種差があり,日本人はRAが約半数に対し,白人では約半数がSAである.つまり,日本人の約半数は,欧米のガイドラインにおけるINHの標準的用量300 mgでは,十分な有効濃度に至らず,適切な治療効果が得られない可能性がある.日本人の半数は欧米のINH 300 mgの効果を得るには約1.5倍の450 mgが必要であるとの指摘もある.したがって,初期治療で奏効しない場合はINHを増量する.

〔亀井 聡〕